
「年寄りになったからって、
賢くなるもんじゃありませんよ。
用心深くなるだけですな。」
(アーネスト・ヘミングウェイ 小説家)
その昔、人類が部族ごとに集落をつくって
暮らしていた頃、一族から崇められる
長老と呼ばれる人がいました。
人々は困ったことが起こると、
知恵を授けてもらうために
長老のもとへ足を運んだものです。
しかし、今や核家族化が進み、
若夫婦は団地に住居を構えて独立して
生活するようになりました。
年寄りは、定年を迎えると
職場からお払い箱となり、
社会からは必要の無い存在として
切り捨てられてしまいます。
かくして、代々受け継がれてきた
部族の知恵は、とうに死に絶えて
しまったのです。
もちろん、現代でもかつての長老のように
「人生の知恵」を携えて生きる賢者も
少数ながら存在しています。
しかし、部族に長老は一人しかいないように、
すべての年寄りに卓越した知恵を期待するのは
間違っています。
なぜなら、ただ年を取れば勝手に賢くなる
ものではないからです。
多くの大人がそうであるように、
年を重ねても愚かな人はいつまでも愚かなままなのです。