
「もし若いときに旅をしなかったら、
くたばる前にどんな思い出話を
するのか。
もっと人生を楽しむことを
考えた方がいい。」
(船戸与一 小説家)
「かわいい子には旅をさせよ」
という言葉があります。
この場合の旅とは、「物見遊山(ものみゆさん)」
のお気楽な旅のことではありません。
昔の旅は、交通手段も発達していなかったので、
もっぱら馬か徒歩に限られており、
決して容易なものではありませんでした。
旅を続けることそのものが苦労であり、
社会の厳しさや辛さと否応なしに向き合わざるを
得ませんでした。
また、たとえ「一人旅」であっても、
自分だけの力で旅を遂行することはできません。
誰かの支えがあってこそ、
旅を続けることができるのです。
そうした人の情けを痛感するのも、
「旅の効用」の一つです。
人は、旅を通して人生の「酸(す)いも甘い」
も噛み分けながら、大人になっていくのです。
つまるところ、旅とは「体験」のことです。
人は、「体験」を通して大人になり、
人間の幅を広げながら、より豊かさを
増していくのです。