
「肩書きがなくては
己が何ものかもわからんような
阿呆どもの仲間になることはない。」
(南方熊楠 生物学者、民俗学者)
「博覧強記(広く書物を読み、よく覚えていること)」
とは、まさに南方熊楠のためにある言葉です。
熊楠は、子どもの頃から驚異的な記憶力を発揮しました。
知人宅で、百科事典「和漢三才図会(全105冊)」
を読ませてもらい、それを自宅に戻ってから記憶で再現し、
5年がかりですべて写し終えたというから驚きです。
後に、大学予備門(現・東大)に入るも、
学業に身が入らず落第。
このとき同期にいたのが、夏目漱石、正岡子規、
秋山真之ら錚々たる面々でした。
翌年、単身アメリカに渡った熊楠は、植物採集などの
フィールドワークに精を出します。
続いて、英国に渡り、研究の成果を論文で発表するや、
たちまち1位に入選。
科学雑誌「ネイチャー」には、
生涯で51本の論文が掲載されましたが、
この記録は現在に至るまで破られていません。
熊楠は、学位という権威にすがろうとする学者たちのことを
バカにしていました。
在野研究者として実績を築き上げた自分自身に、
大きな誇りを感じていたのです。