
「自分の人生経験だけでは
足りないのだから、
人類の遺産の文学作品を
読まないと人間は一人前に
ならない。」
(黒澤明 映画監督)
「事実は小説より奇なり」という言葉が
あるように、どんなに周到に練り込まれた
物語も所詮は現実世界の模倣に過ぎません。
どれほど荒唐無稽な作品に描かれた人生よりも、
さらに数奇な運命をたどるのがリアルの人生です。
逆に、文学作品で描かれた世界も、
遠からず人間社会において現実化する
可能性が高いと言えます。
たとえば、数十年前のSFに描かれた空想世界は、
科学技術の進歩により既に現実のものとなって
います。
作家の持つ想像力や洞察力は、
本当にバカにできません。
すなわち、文学作品を読み味わうのは、
擬似的に人生経験を積むのと
根本は同じことです。
私たちが、リアルの世界で積むことができる
人生経験の数には、自ずと限界があります。
しかし、本の中であれば、
その気になればいくらでも人生経験
を重ねることが可能です。
普段は接点も持てないような別世界の人生を、
垣間見ることもできるのです。