
「人生の運命を担う勇気を持つ者のみが英雄である。」
(ヘルマン・ヘッセ 作家)
英雄というのは、自ら望んで成るようなものではありません。
望むと望まざるとにかかわらず、
時代の総意によって期せずして
祭り上げられてしまう人。
それが英雄の器です。
幕末の英雄ともてはやされる坂本龍馬や西郷隆盛も、
家族や友人達からすれば、どこにでもいる
普通の人間にしか見えなかったはずです。
しかし、彼ら英雄が「普通の人間」と
違うのは、どんな時でも自分の運命から
逃げ出さなかったことです。
西南の役に敗れて城山で腹を切るときに、
「勝ち目のない戦などしたくなかった」
と涙をこぼす西郷さんの姿など、誰が想像できる
でしょうか。
不満分子に首を狙われていることを理由に、
志を投げ出して京都から一目散に退散する
龍馬の姿が思い浮かぶでしょうか。
最後の最後まで、自分の運命を
投げ出すことなく自らの美学に
殉じた彼らの生き様こそ、
英雄の生涯と呼ぶにふさわしいのです。